そのまま堀川の首に腕を回し、がっちりとホールドする。



「…?!!ッ、お、い」

「…ッう、ぐぐ…!!!」



ぼやける視界の中、相手に抱きついたまま私は必死で手を伸ばした。すると指先に「カツン」と眼鏡のフレーム部分のような感触を感じる。

あ、あと少しで、掴める…!!!

振り払う素振りも見せない堀川に疑問を感じたが、それを好機と見た私は震える指先に力を入れて勢いよく眼鏡を掴み上げた。



「…!!ど、…っどりゃああッ!!!」

「………」



や、やった!!!これは間違いなく私の相棒!!眼鏡!!

そして急いで堀川から離れた私は、眼鏡を持っていない方の手で目の前の男を豪快に指差した。なぜか堀川は固まっているように見えるんだが。まあいいか。



「…っふ、ふはははは!!み、見たか堀川!!私だってやる時はやるんだ!!いつまでもやられてばかりの私だと思うなよ!!」

「……お、お前、」

「…っ!!じゃ、じゃあサヨナラッ!!」



そして私は固まったままの堀川を置いて、言い逃げするように慌てて目の前の自分の家に駆け込んだ。

バタン!と勢いよくドアを閉めた私は緊張が解けたのか、へなへなと膝から脱力していく。

こ、怖かった…。

心臓がドクドクと波打つのを感じながら、私は堀川から奪還した相棒の眼鏡に視線を落とす。



「………」



今度こそあの堀川に、一泡吹かせてやった。



「…や、やればできる子なんだ私も…。ふ、ふはは…ふははははっはははは!!やった、やったー!!」



玄関で万歳をして喜びを体で表現する私。しかし視界が鮮明になっていくうちに、一つ後悔することがあった。


『…ッ?!!』


そう。

視界がぼやけていた所為で堀川の表情が見られなかったことだ。

まあそんなの、逆らえたことに比べたらどうでもいいことか。


「ふ、ふふ…」


堀川のアホめ、さぞや悔しそうな表情をしていたことだろうよ!!堀川の表情を想像すると笑いが止まらんな!わっはっは!!



「ふははははははははっは!!!」

「ちょっと明理!!うるさいわよ!!近所迷惑!!」



台所から聞こえる母に怒られながらも、ミッションをクリアーした自分に少しだけ自信を持てた私だった。





『 窮 鼠 猫 を が ぶ り 』
(これが私の本気だ!)



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