また、じゃ。


また、聞こえた。


今度はしっかりと、鮮明な音じゃった。


からん、て。


錆びついた鈴の音に背中を叩かれた。そげな気がして。


ちょっこし待ちんさい。そう言われちょるような気がして。


うちは胸元をぎゅうっと押え付けるように握って、前に向き直った。


ほいて、短く浅くフウッと息を吐く。


なんじゃろう。


この……胸騒ぎがする感じ。


うち。


なんかを……大切ななんかを忘れちょる。


そげな気がしてならんのはどげしてじゃろう。


小首を傾げながら航ちゃんの肩越しに、前方を歩くジローちゃんと花恋の後姿を見つめる。


「もう少しじゃ、大丈夫か? 花恋」


「うん、うちは全然。すまんのう、ジローちゃんまで巻き込んでしもうて」


「いやぁ、なんもじゃあ」


おかしいのう。


今の鈴の音、花恋には聞こえんかったんじゃろうか。


航ちゃんにもジローちゃんにも聞こえちょらんようじゃ。


うちにだけ、聞こえたんじゃろうか。


やっぱし、うち。


なんか、えれぇ大切なこと、忘れちょる。気がする。


きっと。


じゃけど。


思い出せん。


なぜか。


じゃから、こげに胸騒ぎしちょるんじゃ、きっと。


うちは航ちゃんの白い半着の肩の辺りをむしるようにつかんだ。


「お、なんじゃあ、どげした」


航ちゃんが首を右に捻って「大丈夫か」と問いかけてくる。


「えっ?」


「足、痛いんじゃろう」


「あ……いや、ううんっ」


うちは慌てて首を振って、「大丈夫じゃ」と航ちゃんの背中にぽすっと顔を埋めた。








境内まで戻ると、アンディと長谷山さんが拝殿の階段に腰かけて待っちょった。


うちらが注連縄の結界を抜け出ると、ふたりは立ち上がり、安堵の表情を浮かべてストンと肩を落とした。


「花恋」


一生分、いや、来世の分まで心配しました、と顔に書いちょるアンディを見た花恋は罰が悪そうにちんまくなって、ジローちゃんの後ろにひょいと身を半分隠す。