王子は冒険者になる!

お茶なんて飲みたくない!


***

*****

はいはーい。
俺、フランチェスコ。13歳っ!

いろいろ、成長したぜ。

まず、
騎士タイラーに作ってもらった『変身のひも』
あれ、超 大活躍。
やべぇ。頭に結びつけるだけで
髪色や瞳の色が変わって、存在も「ぼんやり」する感じ。

これを多用して
王宮外に出てみたり、
城内の いろいろな仕事を見て回ったり。

すっげぇ、社会勉強になってる。
まぁ、そのたびに協力していただいている騎士タイラーには
負担をかけてしまって申し訳ないけど。
一度、時間を過ぎても部屋に戻れなかったら、
タイラーの魔力の枯渇を起こすぐらい
負担をかけてしまって 
しばらく騎士タイラーが不調に陥ったから、
それからは、きちんと気を付けるようにしている。

ちなみに、騎士ビラットには三回目の外出でバレて、
すんげー怒られたけど、なんとか 黙ってもらって協力してもっている。
助かるわー。

ちなみに、リィアとセーラにはマジで内緒だ。
マナーの時間を増やされるだけじゃ足りないぐらい説教されそう。

背もだいぶ伸びたし、
再来月には学園に入学するしな!


「フランチェスコ王子。こちらを。」
ジゼが何枚か、書類と手紙を持ってくる。
受け取りながら、にっこり、と笑うけど ジゼも相変わらず、顔を一瞬しかめる。
ホント、彼にだけは「王子様スマイル」不評なんだよな。
もはや、今はジゼに嫌がらせのために にっこりと 笑うようになっている。

「ジゼ。このお茶会って・・・」
「はい。フランチェスコ王子もそろそろ学園に入園されますし
 そのご学友となられるであろうご子息 ご令嬢を 集めております。」

やっぱりかぁ。何度かやってるけど・・・
ふぅ。これがなかなか面倒。
積極的に俺の「婚約者」の座を射止めようとする肉食系ご令嬢とか
側近になりたいごますり子息、とかさぁ。

ひとつひとつ 封筒を確認する。
俺に取り入りたい貴族とか、あ、これはセリィからだな。

俺、学園に入学した時がチャンスだと思うんだよね。
だから、一年以内には・・・冒険に出たいんだよなぁ。

「ジゼは・・・大丈夫だろう。」
「はい?何がでしょうか?」
「ジゼは、僕などに仕えなくても、
 優秀だから 何処の部署でもやっていけるだろう?」
「まぁ、そうですね。
 ご命令でしたら。」
「ははは。優秀だな。」

うんうん。そーゆーやつだよ。マジでゴーイングマイウェイな奴。
王子である俺にも思いっきり『不機嫌』を隠さないしな。

そもそも、ジゼの笑った顔とか見たことないかもな。

「しかし、王子。」
「ん?」
「誰に仕えるかは 自分自身で決めます。
 やりたいことは、自分で決めます。『優秀』なんで
 引く手あまたなんです。」
「・・・っははは。さすがだなぁ、ジゼ。
 では、やりたいことが出来たら・・・
 僕の側近から解放するからすぐに報告しろよ?」

あ、兄様から手紙だ。
元気かなぁ。
学園のエンブレムが薄く入っている封筒を手に取る。
真っ黒でころんとした、「魔卵」はまだ孵らないらしい。
楽しみにしているのになぁ。

と、俺は アレク兄様からの手紙に夢中で
ジゼが珍しく 驚いたような悲しいような、そんな複雑な表情を浮かべたことに
まったく気が付かなかったのだ。

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