初恋の君に真紅の薔薇の花束を・・・
ロベルトは机に向かい、何度もジャスティーヌからの礼状に目を通しては大きなため息をついた。
 はっきり言って、ジャスティーヌの教養には申し分ない、もしかしたら、ロベルトですらよく覚えていないような細々とした王家の歴史だって、ジャスティーヌなら覚えているかも知れないほどだ。
「しまった。本なんか贈るんじゃなかった」
 思わず声にして言うと、ロベルトは大きなため息をついた。
 早くジャスティーヌに思い出して貰いたいと気持ちがはやり、続けてジャスティーヌに誘いを出そうとしたロベルトを侍従長が、『交互にという取り決めでございます』と、窘めた。しかし、今更アレクサンドラに会ったところで、時間の無駄なのにと思うと、次の予定など、全く思い浮かんではこない。
 しかし、朝から既に五回も父王から次の予定を決めるようにと言う催促の使いが訪れており、ロベルトは再びジャスティーヌからの手紙を前に頭を抱えた。
 六度目の催促を受け、ロベルトは何も考えないままその時頭の中にあった自分がしたいこと、つまり『遠乗り』に誘うことに決めたと宣言した。
 ロベルトの決定に従い、見合いの準備は着々と進められていった。

☆☆☆

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