初恋の君に真紅の薔薇の花束を・・・
「これでは、遠乗りというよりも、散歩と言ったスピードだな」
 アントニウスの言葉に、アレクサンドラはチラリとアントニウスに目を走らせた。
「やはり、貴殿はこのくらいのスピードがお好みかな?」
 丁寧だが、少し挑発するようなアントニウスの言葉に、アレクサンドラは眉間にしわが寄らないように注意しながら『僕はもっと早い方が好みですよ』と答えた。
「それにしても、あの二人、お似合いという雰囲気ではないな。従弟の貴殿からはどのように見ているのかな?」
「それは・・・・・・」
 思わず、『ジャスティーヌ』と言いそうになったアレクサンドラは、慌てて言葉を切った。
「どうも、ロベルト殿下はアレクサンドラ嬢に歓迎されていないように感じるが、やはりこのお仕着せのお見合いは、迷惑だったのでは?」
 尋ねるアントニウスの真意が分からず、アレクサンドラは慎重に言葉を選んだ。
「国王陛下の思し召しですから」
「ああ、貴殿は自分がロベルト殿下の従兄だという事を気にしているのかな? 自分の前では、思っている事を忌憚なく話してくれて構わない。何せ、自分はこの国の人間ではないからね」
「そうですか、それであればハッキリと言わせて戴くなら、しがない伯爵家としては従うより他にないというのが事実です」
「やはりそうか。ロベルト殿下には、既に結婚を約束した令嬢がいるというのに、陛下も無謀な事を決断されたものだ」
 アントニウスの言葉に、アレクサンドラは沸々と怒りがこみあげてくるのを感じた。
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