替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする
side マグダナ
「王妃様、本当にようございましたね。
おめでとうございます。」

ヒルダの言葉に、私はなんと返せば良いのかわからなかった。



「ヒルダ…本当にこれで良かったのだろうか?」

「もちろんです。
こうなることが、運命だったのです。」



私は、この国を滅ぼそうと思っていたのに、まさかあの者がそれを救うことになろうとは…
何と皮肉なことだろう…



今でも、私には信じられないような気がする。



先日、ヒルダがここで話したこと…
それは、とても衝撃的な話だった。







「マグダナ様、王子様が生きてらっしゃいます。」

「王子?どこの王子だ?」

「マグダナ様がお産みになられたあの王子様でございます。」



その言葉を聞いた瞬間、私は20数年前のある事実を思い出した。
背筋に冷たい汗が走った。



私はある時、体調が悪いので静養に行くと言い、ヴァリアンの別荘に戻った。
それがただの体調不良ではないことは、私にはわかっていた。



当時から、私は子の出来ない薬を飲んでいたにも関わらず、子が宿ってしまったのだ。
私は何とかその子が流れるようにとあれこれ手を尽くしたが、その子はとてもしぶとかった。



父親は、国王だと思った。
実は、その当時、私はシルヴェールと会う機会があり、間違いを犯した。
しかし、それはたった一度のこと。
彼の子である道理がない。
いや、たとえそうであろうと、そんなことは関係がない。
私は、決して子を産んではいけないのだから。



私が産んだ子供は王子だった。
リゴレットを滅ぼそうと思っていたのに、王子を産んでしまった…
私はそんな自分自身に激しい憎しみを募らせた。
< 239 / 257 >

この作品をシェア

pagetop