イジワル専務の極上な愛し方
翔太さんは本気です
「真中副社長って、恋人がいるでしょ? しかも、社内恋愛! 真中専務は? そういうの聞かないの?」

と、かなり久しぶりに同期とランチをして、そんなことを聞かれてしまった。まさか、翔太さんの話が出るとは思わず、飲みかけのアイスティーを気管に詰まらせてしまった。

「ちょっと、彩奈ってば大丈夫!?」

咳き込む私を、麗香(れいか)は心配そうに見つめている。彼女は、営業部に所属していて、私も秘書に異動する前は、よくランチをしていた。

でも今は、翔太さんのスケジュールに合わせなければいけなく、彼女とも疎遠になりがちだっただけに、今日は本当に楽しめている。

翔太さんは、取引先とランチ中で、久しぶりにお昼休憩は自由。会社近くのカフェで、オーガニック料理を堪能し終えたところでの質問で、完全に気が抜けていた。

ここまで、翔太さんの話なんて出てこなかったのに。

「だ、大丈夫。急に専務の話になるから……」

「ごめん。だって、いきなり聞くのもミーハーだと思われたらイヤだなって思って」

綺麗でスッとした顔立ちの麗香は、性格はとても落ち着いている。たしかに、今まで恋バナやミーハー的な話を聞いたことがない。

だからこそ、翔太さんの質問をされて咳き込んでしまった。

「さあ……。さすがに、話せないことが多いから」

曖昧……というより、怪しい答え方をしてしまったかなと後悔しつつ言葉を濁す。

翔太さんは、私との関係を隠すつもりはないと言ってくれているけれど、彼に相談する前に私から勝手に話せない。

だいたい、まだ社長に挨拶もできていないのだから。麗香には申し訳ないけれど、ここはしらを切りとおすしかない。

「そうなんだ。でも、その口ぶりからだと怪しい感じ。やっぱり、相手がいるのかな? どこぞの社長令嬢とか?」

麗香にしては珍しく、話に食いついてくる。うっかり口を滑らせないか、自分のこととはいえヒヤヒヤした。

「私には、言えないから。でも麗香にしては、やけに興味を持ってない?」

そう聞くと、彼女は少し顔を赤らめた。たぶん、この手の話は、麗香にとっては気恥ずかしいのだと思う。

「営業部でね、ずっと話題が持ち切りなの。副社長が社内恋愛してるなら、専務に期待ができるんじゃないかって」
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