かおるこ連絡ノート
母親を、私立の高価な病院の個室に入院させた。


「お金はどうするの」


心配する母親に、邦宏は笑った。


「親父に払わせるから、心配すんな」




治療のかいもなく、母親は肝臓癌で、最後は邦宏の顔もわからなくなって死んでいった。


(かあちゃん)


狭いアパートで、小さな骨壷を抱えて、邦宏は膝を抱えて、泣いた。


(絶対、あいつに思い知らせてやるからな。
かあちゃんが、こんなふうに苦労して、野たれ死んだこと。
絶対あいつに、後悔させてやるからな)



そうして。

邦宏は、友永の家に、乗り込んだ。


親孝行のつもりじゃない。

だけどせめて。

母親の苦労と不幸の半分でも、父親に気付かせてやるために。






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