真実さんと正義くん(おまけ話更新中)

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それからはもう神野藤くんへの質問の嵐だ。

「25で結婚って早くね?俺はまだ考えたくないわー」

「もっと早い予定だったけど、俺が転勤になったからさ」

「男の人で結婚願望強いってめずらしいねー!」

「そうかな?あ、そうかも。彼女は結婚願望薄いって昔っから言ってたし」

「昔からって…付き合って長いの?」

「10年かな」

「「「10年!!?」」」


神野藤くんの口から他の女の話なんて聞きたくない。でも気になって聞き耳を立てていた私は思わず一気にグラスを煽っていた。
10年…10年って!!

「―――香織、私ら10年前何していたかしらね…」

「あ、えーと。ちゅ、中学生活を満喫してたかな…」

そうよ、中学生よ。神野藤くんに出会ってすらいなかったわ!!


「なっが!!」

「え~10年愛ステキじゃん!!」

「付き合う前から数えたら25年」

「は?」

「幼なじみなんだよな、お前ら」

「うん、そう。彼女の方が数ヶ月お姉さんだけどね」

「俺だったら付き合うのも無理だなー。そんだけ長いともう家族じゃん、恋愛感情もてねぇわ」

「相手が野原くんだとそうだけど、神野藤くんが相手だよ?彼女さん目が肥えちゃって他行けないって!」

「はぁ~?海江田ーお前なー!」


10年の付き合いでしかも幼なじみって何よ。どこの少女漫画よ…と思ってた所に聞こえてきた野原くん達の話に私はグラスを持つ手に力を込めた。

「ま、麻衣…?」


ニヤッと笑った私を見て香織が心配そうに呼んでくるけど、それどころじゃないわ香織。
私、分かっちゃったの。
神野藤くん。貴方の幼なじみへの愛はLoveじゃなくて家族愛なのよ!そう、Likeなの!!
ながーく一緒に居ることで勘違いしてるんだわ。
勘違いを解くには今回の転勤が良い機会だったのに…遠距離なんてスパイスが効いちゃって早まってしまったのね…可哀そうな神野藤くん!
私が目を覚まさせてあげるわ!!!


「香織、私諦めないわ」

「え?は?だってプロポーズしてんだよ!?」

「まだプロポーズよ、今なら彼を救えるもの」

「ちょ、落ち着きなさいよ!救うって何から!?」

「もちろん、幼なじみからよ。彼が優しいからって人生まで狂わせてしまうなんて悪女にちがいないわ」

「あくじょ…」

「そう!私が目を覚まさせてあげなっきゃ!!」


そうと決まればどうやって2人で抜けるか計画練らなっきゃ!
さっきとは打って変わってウキウキとお酒を飲みだした私に香織は頭を抱えて項垂れた。
そして「もうさっさと玉砕してきなよ…」という悲痛呟きは騒音に掻き消され、妄想中の麻衣へ届くことはなかったのである。







―――終―――



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