冬、いつもは冷静な春樹が取り乱していた。一人で泣いている姿を何度も見た。何があったのか聞きたかったが、聞けなかった。

 そのまま冬が過ぎた。春樹は毎日私と夕飯を食べている。あの女、東出瑶子は学校を辞めて遠くへ引っ越したと、春樹の同僚から聞いていた。全てが元に戻った、去年一年に起こったことは、長い人生の中でのほんの一時の驟雨のようなものだったのだ。また凪の時間が訪れた、そう思った。