春樹の職場であの女を初めて見た日、帰宅した春樹を私は抱きしめた。春樹は驚き、身体を離そうとしたが、私は力を込めて、春樹を抱きしめた。春樹が、夫が可愛そうだった。あんな女に心を奪われている夫が可愛そうだった。
 
 美しく若い女、あんな女が真面目に春樹と向き合うはずはなかった。春樹は私にとって、自慢のかけがえのない男だ、でも、今月で三十七歳になるという事実からは、どんなに頑張っても逃れることはできない。年を重ねたその顔は、私にとっては愛おしいものだが、でも、それでも、あの女の横に似つかわしいものではない。あの女の若い輝きに目がくらみ、自分を見失っている夫が可愛そうだった。