硝子の花片
第三章 白刃と紅い三日月

予感と確信

暁の夜から私の心はざわついている。

…私は自分の気持ちに気づいてしまったのだ。

「桜夜さん?熱があるんですか?顔、赤いですよ?」

私は今、沖田さんと平助くんと一緒に甘味処で休憩中なのだが…私の目の前には沖田さん、隣には平助くんという奇妙な配置でテーブルを囲んでいた。

前を見てしまえば沖田さんの綺麗な顔が見えてしまう。

もう、その透き通った中低音の声さえも遮断したいくらい体温が上昇していた。

「いっ、いえ!なんでもないんですっ!多分夏本番になったからかなぁ。あは、あはは」

私は笑って誤魔化した。…何だろう、この気持ちを知られるのがちょっと怖いのだった。

「本当ですか?体調が悪くなったら言ってくださいね?」

沖田さんは心配そうに私の顔を覗き込む。

今はそんな顔見せないでください…心臓が持ちません…っ。

私は隣に居る平助くんに助けを求める視線を送った。

「あれっ、総司。そういえば、今朝の体調不良は大丈夫なの?お腹痛いって言ってたよね」

「う、折角忘れてたのに思い出したら痛くなってきた…ちょっと席外しますね…うう」

沖田さんはお腹を擦りながら外の空気を吸いに行った。

「あはは、その様子じゃあ、自分の気持ちわかったみたいだね!よかったあ。」

平助くんは人懐っこい笑顔を見せた。

「その節はありがとうございました!やっとわかったけどわかった途端に恥ずかしくなっちゃったよ…」

私は苦笑いしか出来なかった。
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