クールな御曹司の甘すぎる独占愛

花いかだの女将、依子だった。若葉色の着物にレモンイエローの帯が目に鮮やか。今日も着物の着こなしは抜群である。


「いらっしゃいませ。昨日はありがとうございました。お料理もとってもおいしかったです」
「こちらこそありがとう」
「いろいろと詳細を決めなければならないのに、こちらからお伺いもせずに失礼いたしました」


奈々が頭を深く下げる。
花いかだに和菓子を卸すことにはなったが、詳細はまだ決まっていない。これからいろいろ詰めていかねばならないだろう。


「いいえ、いいのよ。久しぶりに光風堂さんの和菓子を直接見たかったから」


依子はにこやかに言うが、もしかしたら偵察なのかもしれないと奈々はとっさに思った。昨夜は水瀬の手前、話に乗り気でなくても断るに断れなかったとも考えられる。


「では、試食していただけませんか?」
「そうさせていただこうかしら」


依子をテーブル席に案内して戻ると、明美が「どなたなんですか?」と首を傾げる。

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