国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
第一章 怪しげなフードの男
ラタニア王国。それは、最も広大な面積を誇るメザルダ大陸の中で一番勢力のある超大国として世界中で名を轟かせていた。一夜にして大金を稼ぐことも可能と言われるくらい、金の流れのある経済と商業の富んだ王国で軍事力も随一だ。人口も多く、たくさんの人が他国から出稼ぎにやって来る。そんな大国の王都から少し離れた教会に、濡れたように輝く金の長い髪を持ち、緑がかった碧眼の娘が住んでいた。

彼女の名前はミリアン・エマ・フィデール。そして今日は、ミリアンの十八になる誕生日だった。

「ミリアン、今年も本当によかったのかい? 今日はお前の誕生日だというのに……」

少し腰の曲がった白髪のロパ牧師が大広間にやってきて、髪の色と同じ白くて伸びた眉を下げ、頭ひとつ分ほど背の高いミリアンを見上げて言った。

「えぇ、いいんです。今年もたくさんの美味しいお料理を子どもたちに振舞ってくださってありがとうございました。みんな大喜びでしたよ」

大広間に置かれた木製の長いテーブルの上には、食べたあとの皿が何十枚も散らかり放題、そして床にはスープをこぼした後がおびただしく広がっていた。ランチのパーティが終わって、子どもたちを昼寝に寝かしつけたあとでミリアンはそれをひとつひとつ片付けているところだった。

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