湖にうつる月~初めての恋はあなたと
9.今できること
9.今できること



朝起きると枕元に置いてあるスマホがチカチカと受信ランプを点灯させていた。

ベッドで寝ている相原さんを起こさないようにそっと布団から出ると玄関に向かう。

スマホを開けると電話がかかってきていた。

山川さんからだ。しかも夜中に何件も入っている。

胸騒ぎがした。

夜中の電話は嫌な記憶しかない。母が緊急入院した時、そして母が・・・・・・。

玄関から外に出ると、震える指で山川さんの電話に折り返す。

電話はすぐに着信し山川さんの声が響く。

『真琴ちゃん?』

「何度も電話頂いていたのにすみませ・・・」

『お父さんが大変なの。すぐにT大病院に来て頂戴。一階ロビーで待ってるから』

お父さん?

山川さんの声がいつになく緊迫していた。

「はい、すぐ向かいます!」

私は相原さんの家に再び戻ると、急いで布団をたたみ着がえをすませる。

「あら、どうしたの?今日は休日なのに早起きね」

静かに動いていたつもりだったけど、相原さんを起こしてしまったようだ。

目をこすりながら、相原さんはベッドから体を起こす。

「起こしちゃってすみません。父が・・・父が病院に運ばれたみたいで、今から行ってきます」

「お父さんが?谷浦さん、真っ青だけど大丈夫?」

「はい、なんとか」

そう言いながら立ち上がったら目の前がくらくらして足下がよろけた。

すぐに相原さんが私の体を支えてくれる。

「どこの病院?」

「えっと、T大病院です」

「ここからだと電車よりも車の方が早いわ。送っていったげる。着がえるから少しだけ待ってて」

そう言うと、相原さんは急いで洗面所に向かった。

「ありがとうございます」

と言うも、声に力が入らない。

そのまま相原さんのベッドに座り込んだ。





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