副社長は花嫁教育にご執心
第二章 

嫁の役目



結婚したいです。結婚してください。……は、あまりに積極的な感じで恥ずかしい。かといって、結婚してあげてもいいわよ?なんて言えるほどの自信も度胸もない。

結婚しましょう。結婚しようや。結婚してたもれ。……ああ、どれもなんだかしっくりこないなぁ。

“結婚可”という自分の意思を支配人にいつ伝えようかと、翌日は出勤するなり緊張し通しだった。

だって、昨日はあんなに嫌がってたのに、手のひら返したように結婚したいだなんて、不審に思われそうだし。どうやって伝えるのが一番いいんだろう……。

考えすぎて、レストランの窓から見える施設の通路をたまたま支配人の姿が通るだけで、妙に意識しながら目で追ってしまい、上の空だと店長に叱られてしまうくらいだった。

あげく体調を心配され、休憩に入らされるという始末。

「ダメだ……仕事はちゃんとやんなきゃ」

机と椅子があるだけの、八畳ほどの簡素な休憩室。その壁に掛けられた時計を見て、がっくり肩を落とした。

あーあ、十二時に出勤して、まだ二時間しか働いてないじゃん。

とはいえ与えられた休憩は無駄にできない。あまりお腹はすいてないけど、ちゃんと食べるもの食べて、午後の笑顔が曇らないようにしなきゃ……。


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