【完】キミさえいれば、なにもいらない。
なんだろう。なんだか胸の奥がずしんと重たい。


今の、鈴森さんの言ったことが、全部本当なのかはわからないけれど。もしかしたら彼方くんと仲良くしている私に対する苦言のようなものなのかもしれないけれど。


だからって、嘘だとも言いきれない。


彼方くんは誰にも本気になんてならない。だから、私のことだって本気じゃない。ただ気まぐれに、興味本位で近づいてきただけ……。


言われてみれば、そうなのかもしれないとも思う。


私だって、うぬぼれていたつもりはなかったし、彼と友達以上の関係になりたいと思っていたわけでもない。


だけど、なぜか胸がすごくモヤモヤして。


どこかで今の彼女の言葉を「信じたくない」と思っている自分がそこにいた。


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