【完】キミさえいれば、なにもいらない。
「そっかぁ。もうそんな時期なんだね」


私が何気なく呟くと、彼方くんが顔を覗き込んでくる。


「雪菜は行くの?」


「……うーん、どうだろう。まだ何も考えてない」


せっかくだから、一緒に行く相手がいれば行きたいとも思うけど、璃子はバイト先の先輩を誘うって言ってたし、他に誘う人もいないからな……。


なんてことをつらつらと考えていたら、彼方くんがニコッと笑う。


「じゃあ、俺と一緒に行くっていうのは?」


「えっ!」


ちょっと待って。急に何を言い出すんだろう。


「な、何言ってるの……っ。彼方くんは、他に一緒に行く友達がたくさんいるでしょ」


さすがにそこですんなり『いいよ』なんて言えるわけもなく、返事をはぐらかす私。


「ほら、あの、いつも一緒にいる、可愛い幼なじみの子だっているし……」


さらにはふいに鈴森さんの顔が頭に浮かんで、思わず口に出したら、彼方くんは戸惑ったような声をあげた。


「えっ。幼なじみって、もしかして美空のこと?」


「うん……」


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