【完】キミさえいれば、なにもいらない。
*キミさえいれば、何もいらない。
劇の上演時間が近づくにつれて体育館には人がどんどん集まってきて、開始直前には会場全体の三分の二以上がお客さんで埋まっていた。


私は璃子と一緒に少し早めに来ていたので、わりと前のほうに場所を取ることができて、開始時間まで二人で座って話していた。


「すごい人だね~、クラスの劇発表だっていうのにさ。しかも、完全オリジナル脚本で、配役も内容も秘密なんでしょ。それでこれだけ客集めちゃうの、すごいよね」


璃子が隣で感心したように語る。


彼女はあの後チャイナドレス姿のままバイト先の先輩と学祭をまわって楽しんだみたいで、いつも以上にテンションが上がってるみたい。


そのせいか、私は泣いた後で赤くなった目にも気づかれず、何も突っ込まれなかったので助かった。


「そ、そうだね。逆に秘密にしてたから、みんな気になって見に来たのかな?」


「うーん、それもあるとは思うけど、やっぱり彼方くんが主役で出るからっていうのもあるんじゃない?彼、学年問わず人気あるし」


「確かに……」


「劇のタイトルも今日発表されたけど、『王子の初恋』っていうんだってね。ってことは、主役の彼方くんは王子役なのかな?」



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