冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない
向ける刃の先
「少し、ご気分が晴れたみたいですね」

 部屋に戻ってきたマーシャは、顔色が幾分かよくなっているライラを見て安心した。ライラは朝からの態度を詫びる。

「マーシャ。そのっ、心配をかけてごめんなさい。でも、私は大丈夫だから」

 お茶の器具を片付けながらマーシャは淡々とした口調で返した。

「なにがあったかまでは聞きませんが、いざとなれば、この私がスヴェンさまにガツンと言って差し上げますから」

「え?」

 突然、スヴェンの名前がマーシャから挙がり、ライラは目を丸くする。マーシャは手を止めずに続けた。

「ライラさまがそんな顔をする原因などほかに思い当たりません」

「スヴェンが悪いわけじゃ……」

「だいたい男女間での揉め事は、男が悪いものです」

 紋切り口調のマーシャにライラは苦笑する。けれどマーシャの気遣いは十分すぎるほど伝わった。セシリアに話を聞いてもらったときと同じで心が温かくなる。

「ありがとう、マーシャ。でも、スヴェンとはちゃんと話をするから大丈夫だよ」

 それを聞き、マーシャはつり上げていた眉と目尻をわずかに下げた。

「なら、いいんです。迎冬会も近くスヴェンさまもお忙しいでしょうが、きちんとお話されてくださいね。ご夫婦なんですから」

 ライラは迷いなく首を縦に振る。それからマーシャと迎冬会について話したり、何冊か暇つぶしに持ってきてもらった本で読書に耽ったりして部屋の中で時間を過した。
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