目を閉じたら、別れてください。
愛情が片方にだけある結婚は不幸である、らしく。

着信が溜まっている。
折り返しかけるのではなく、指でしゅっと消していく。
履歴なんて残っていても邪魔なだけ。どんどんどんどん消していく。

式場は、すぐに決まった。
華族の旧お屋敷跡を結婚式場に改装してある『椿館』
季節の花が咲き誇る庭に、池にかかる橋をこえると、小さな教会まで建てられていて、都会のビルの中、そこだけがノスタルジイで奇麗だった。

『彼は忙しい人なので、連絡は私の方が確実です。なるべくは私にかけてください』

履歴を消しながら、私が言った言葉を思い出して笑ってしまう。

『進歩さんは、ご両親や会社に説明しなきゃだから大変でしょ』

だから式場との連絡係は、私が務めることにした。
二回目ということで、互いの親が連絡しあっただけでとくにちゃんとした場は設けなかった。
結納だけはホテルでちゃんとするらしいけど。
「先輩、さっきロッカーで携帯震えてたの先輩です?」
「あ、私かも」

だから電池が少し減っているんだ。
マナーモードにしていたつもりが、バイブだけは解除していなかったのか。

「式場からですか? エステ?」
< 116 / 208 >

この作品をシェア

pagetop