目を閉じたら、別れてください。
何事も縛られないなら、それでいい。


Side:神山 進歩

婚約者の咳が止まらなくなって一か月ばかりが経とうとしている。

病院に行った様子はない。
何か違和感を感じる。隣にいても、心ここにあらずみたいな。
仕事で忙しい日でも、無理に会おうとしたら会ってくれるし、結婚式の準備も俺が多忙なせいでほぼ動いてくれている。

だが、何かが違和感をぬぐい切れなくて、この先に影が見える。

いつも通りの婚約者の様子に、咳がノイズのようにはいってきて邪魔をする。

病院に無理にでも連れて行った方がいいのか。
結構言ったんだが効果がなかったんだから、もっと身近な、斎藤さんに頼んだ方がいいんじゃないのか。


「斎藤専務、いる?」
わざと受付に行ってから確認してもらう。
会社ではなるべく派閥争いをしないように俺と斎藤さんは敵対してないアピールをするために、一目がつくよう行動している。

「専務なら、さきほど神山部長の部署に向かいましたよ」
「いれちがいか。ありがとう」

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