なりゆき皇妃の異世界後宮物語
☬序章 天江国物語
【序章】


今となっては夢物語のようであるが、天陽大陸は一つの大きな国であった。


 天地万物を尊し、国を憂い、民を愛した初代国王徽鄭(きてい)。


 河川の氾濫により、国が三つに分裂し、それぞれに皇帝が君臨するようになった今でも、徽鄭の功績は世に受け継がれ続けている。


 天江国(てんこうこく)、天河(てんが)国、天淮(てんじゅん)国、陰謀と策略と戦で混沌とする情勢の中、夜明けの輝きのように大陸に安穏と平和をもたらす男が現れた。


 後に徽鄭の再来と言われ、伝説となる天江国皇帝、曙光(しょこう)。


 彼は言う、「歴史の影に賢妻あり」


 曙光皇帝に生涯愛され、彼を支えた賢妻、朱熹(しゅき)。


 これは、伝記にはひっそりと名前だけが載っているが多くは語られなかった、一人の女性の物語である。

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