なりゆき皇妃の異世界後宮物語
☬こじらせ皇帝の煩悶
 後宮の初お渡りを終えてから一週間ほどが経った。


 曙光は政務に追われながらも、心の奥にしっかりと宿る温かでくすぐったい感情を秘めて日々を送っていた。


 この不思議な感情の名前を曙光はまだ知らなかった。


 何しろ初めて抱いた気持ちなのだ。


 曙光は皇帝専用の政務室で、国の領地や年貢、今年度の作物の取れ高などの報告書に目を通していた。


 報告書は分厚い図鑑が二冊ほど作れるくらいの紙の量がある。


 集中して読んでいるも、さすがに肩が凝ってきたなと思っていた頃、扉を叩く音が静かな政務室に響いた。


「なんだ」


 曙光が扉の外にいる人物に声を掛ける。


「俺だ」


 皇帝である曙光に、こんな声の掛け方をする奴は一人しかいない。


「なんだお前か」


 秦明は許可を得ていないにも関わらず扉を開けた。
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