おやすみ、お嬢様
私はベットを覗きこむと、そこに寝ている人に声をかけた。

「榛瑠、おはよー、朝ですよ」

彼は包まっていた布団から半分顔を出す。

「お嬢様?いつからそこに?」

「今、来たところ。玄関に出てこないから勝手に入っちゃった」

榛瑠は私の言葉を聞きながら壁の時計に目をやっていた。

「まだ八時台じゃないですか。こんな時間にあなたが来るなんて……。何かあったんです?」

そう言いながら榛瑠の目が再びとじかける。眠そうだなあ。

「何にもないけど。だって久しぶりに一緒にいられる休日だよ。起きて」

彼、四条榛瑠と付き合いだしてーーといったって、子供の時は一緒に住んでいたんだし、私としてはどっちかっていうと元に戻った気がしてるんだけどーー知ったんだけど、彼は意外に寝起きが悪い。

一度起きてしまうと平気みたいなんだけど、起きるタイミング、みたいのがあるらしく……。

言ってる端から榛瑠は布団を被ってしまう。

「もう。昨日何時に寝たのよ」

「何時かな。帰ったのが5時くらいだったから……」

「5時って朝の?何してたの?仕事?」

「飲んでた……」

珍しい、と思った。そんなに外で遅くまで飲んだりしないのに。私が珍しく早起きしたのになあ。

それでなくてもよく仕事が入っちゃって、1日しっかり空いた日なんてこのところなかったのに。
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