愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
紫陽花荘に生きる私の願い
◇◇◇

壁掛けの振り子時計は、七時半を指している。

「大家さん、おはようございます」と挨拶しながら、男性たちがひとり、ふたりと居間に入ってきた。


「おはようさん。今朝も暑いね。倒れんように、しっかり食べていっとくれ」

そう答えたのは私の祖母で、私たち女ふたりは大きな座卓に六人分の朝食を並べていた。


鯵の開きに、ほうれん草のおひたし。

根菜の煮物とオクラの白和え、レンコンのきんぴらと卵焼きに、漬物や納豆などのご飯のお供が数種類。

これらは全て祖母と私の、真心込めた手作りである。

座布団に腰を下ろしている男性たちに、私も朝の挨拶をしながら、美味しくたくさん食べていってほしいと願っていた。


庭から蝉の鳴き声が聞こえている。

七月半ばの東京は暑くて、外を歩くのがつらいほどである。

けれども、この畳敷きの十畳間にクーラーはなく、古い扇風機が二台、ぬるい風を送っているだけであった。


七十歳になったばかりの祖母は、クーラーの冷風が苦手で、扇風機で充分だと言う。

それは古い固定観念があるからではなく、その通りなのだ。
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