愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
隣にいてくれるなら
◇◇◇

秋風が、花のない紫陽花の葉を揺らす。

桐島さんと正式に土地と建物の売買契約を交わしたのは、十月半ばのこと。

彼の言葉通り、私は紫陽花荘に置いてもらえて、朝夕の食事の支度をすることで家賃を免除されている。


私の立場は一応、下宿人ということになっているが、桐島さんは下宿屋を営むつもりはないようで、部屋を借りたいという人が訪ねてきても、断るように言われていた。

つまり、私と彼のふたり暮らしが、この先も続くのだ。


家族でも恋人でもないのに、はたから見ればおかしいと思われそうだけど、私は違和感を覚えない。

私が十八歳の時から、ひとつ屋根の下で桐島さんと暮らしているのだから、この生活を自然に感じていた……。


今日は十月下旬の火曜日。

二十時半になろうかという紫陽花荘の居間には、ふたり分の食事が用意されている。

作ったのはもちろん私で、卓上コンロの上に置かれた土鍋には、十二種類の具材を煮込んだおでんが入っている。

他にも副菜の小鉢を三つ並べて、エプロン姿の私は彼の帰宅を待っていた。

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