春雷

「貴女が、危険な目にあった時に、この気持ちに蓋をするのはやめようと思いました」


「あ!琴葉さんっ!今の角曲がらなきゃいけなかったんじゃないっ?!」

「僕も、もう若くはない。これが最後の恋だと思っています」

「琴葉さんー!塾遠のくよ!お、落ち着いて!
遅刻しちゃうよー!」

「命ある限り、精一杯、貴女を想って生きていきたいんででんす。僕は柴田先生が好きです」

「わあーーっ!!反対車線にズレてるよー!
もーっ!怖いよーっ!二人とも落ち着いてよー!」
由乃ちゃんが助手席から私を揺さぶる。

車の運転に集中したいのに、
先生の衝撃発言に
動揺してしまった。

塾の方向に行こうとすればするほど変な道に入っていった。

「高村せんせー!このままじゃみんな死にます!」

「ああ、申し訳ありません。少し黙ります」

彼は気配を静かに消した。

ほんと、娘の前で何言ってるんだと
恥ずかしさと理解不能な彼に泣けてくる。


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