片恋スクランブル
彼女の嘘と彼の本心



「橘ちゃん、昨日は御園生とホテルに行ったってホント?」

ブッ、

思わず口に含んだばかりのココアを、少し吹き出してしまった。

何を言い出すんだこの人は!

ランチタイム前の休憩で、ラウンジでココアを飲んでいた私に菅谷さんが真っ赤な顔をして突っ込んできたから、嫌な予感したんだ。

「違います!……っていうか、ホテルには行きましたけど、菅谷さんが考えているような事はしてませんからっ、」

「ホテルに行ったのはホントなんだ……」

軽くショックを受けたような顔と、興味津々な顔を交互に私に向ける菅谷さん。

完璧誤解してるし。

あの御園生さんとそういう関係になるわけないのに。

そんなコト……。

脳裏に、昨夜の八木さんと白川さんのキスシーンが浮かぶ。

思い出したくないこと、思い出しちゃったよ。

あんなこと、菅谷さんには絶対言えない。

「菅谷さん、さっきの誰に聞いたんですか?」

「今朝営業部の給湯室で、女子社員の子達が話してた」

また誤解だって弁解して回らなきゃ。

やっとこの前の噂が治まったと思ったのに。

「橘ちゃんって、御園生ばかり噂になるね……」

「どうしてなんでしょう……」

愚痴を言いたくなる。

御園生さんの方は大丈夫なのかな。


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