デキる女を脱ぎ捨てさせて
4.迷い猫
 今日は朝から残業しないように心掛けた。

 あれほど言われているのに残業するのは気が引けるし、何より「次は私の行きつけに…」と言われてすぐに残業するなんて期待してるみたいだ。

「西村ちゃん。
 悪いんだけどさ……。」

 都築くんがコソッと私の席にやってきた。
 こういう時は絶対に何かある。

 人懐っこい彼はいつの間にか、西村ちゃん、都築くんの間柄に自然になっていた。
 年齢は思ったほど気にしていないらしい。

 まだ短い付き合いなのに彼の行動が読めて、そんな彼が憎めないところがまた厄介だった。

 想像していた通り都築くんに無理を言われて朝から決意していた残業をしないようにする心掛けは無駄に終わってしまった。



 雑務を処理しつつ、ひと気もまばらになってきたフロアで都築くんの連絡を待った。

 どうやら都築くんは何かやらかしたらしく切羽詰まった様子で頼まれた。

「俺が取引先に行って返事を聞き次第、それを資料に盛り込んで関係各所に送って欲しい。」

 取り急ぎってやつね。
 仕方ないなぁ。

 断ればいいんだけど、憎めない都築くんの頼みだ。
 二つ返事で受けてあげた。

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