御曹司は眠り姫に愛を囁く
合コン
私はお手洗いから戻ると慌てて準備して、須藤さんと共に社用車で出かけた。

定年退職後、夫婦揃って、小さなカフェを営もうとする60代夫婦の店舗の内装デザインの打ち合わせ。


夫婦のお宅を訪問。

カフェの目玉となる予定のオリジナルのブレンドコーヒーをご馳走になりながら、終始和やかムードで打ち合わせは進んだ。


午前中はそれで終わり、二人でファミレスでランチして、午後からは新規でオープンする代官山の美容院の内装工事の進行具合を見に足を運んだ。


外が夕映えに染まり頃、オフィスに戻った。

今日の須藤さんと共に1日一緒に居たが、昨日の告白は嘘かのように素っ気ない態度だった。

「須藤さん」

「何?」

「少しお話が・・・」

「いいけど・・・」

彼はデスクにビジネスバックをおき、私を奥のミーティングルームに案内した。

彼が室内に光を入れようとブラインドを少しだけ開くと隙間から眩いオレンジの光の帯がスーッと射し込んで来た。

「昨日の返事?」

「いえ、返事ではなく・・・その・・・1日共に仕事をしていましたが・・・全く昨日のコトには触れないし」

「昨日のコト、話したかったの?」

「それは・・・」

「貴崎さん、俺のコト凄く意識していた。そんな君にこれ以上意識させたら、1日仕事できないから…あえて、何も言わなかった。
本当は俺だって・・・昨日の件は嘘じゃないから…真剣に考えてね。貴崎さん」

「須藤さん・・・」

「お疲れ様」

「お疲れ様です」

私は須藤さんにペコッと頭を下げて、先にデスクに帰った。
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