神様には成れない。
07:境界線を越えたい。
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私は今通っている大学に通うには無理があるような地方に住んでいた為、一人暮らしをしている。
高校が同じだった京ちゃんも、同じく一人暮らしをしながら専門学校に通っているのだが、休日の今日彼女の部屋に私はきていた。
視線だけ動かせば一際目を惹くのは白いドレッサー。そのサイドにはいろいろな種類のメイク道具が綺麗に整頓されて置かれている。
傍らには数種類のファッション誌が並べられていて、それだけで彼女がお洒落が好きで勉強家なのだと分かった。
「きょ、京ちゃん……」
この部屋に来る事自体は初めてではなく、時々遊びに来ているのだが、それでも不安から名前を呼びかける。
そわそわとスカートを握って身じろぎすれば、頭をガッと押さえつけられる。
「動かないで、失敗しちゃう」
「う……」
いつもより厳しめの声で制止され、固まるように姿勢を正す。
今日来ている理由は、京ちゃんの課題の一環で、言ってしまえば人の顔でメイクの練習をさせてほしいというものだった。
快諾したものの、こんな風に人にメイクをしてもらう事もなければ、マジマジと顔を見られる事もあまりないので、どう振る舞えばいいのが分からずに落ち着きがない。
だがしかし、私がそわそわとしていても、京ちゃんは気にせず丁寧にメイクを続けていた。