24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~
From 20:00 to 22:00

 立花に連れられてきたのは、有名な高級鮨店だった。
 店名が照明で土壁に浮かび上がり、入口までは白い玉砂利が敷かれ、厳かさに委縮してしまいそうだ。

(こんな格好で入っても平気なのかな)

 黒のスキニーパンツにローヒールパンプス、キャメル色のオーバーサイズシャツというオフィスカジュアルでは、入店も断られそうな気がする。
 それに、こうして立花の隣にいるのもちぐはぐで、本来なら着物やよそいきのワンピースがよかっただろう。


「こんばんは」

 屋根に入って番傘を閉じた立花は、引き戸を開けて店内に顔を出した。彼の背中越しに、伊鈴が店内の様子を伺うと、和装の女将が出迎えている。


「立花さん、いらっしゃいませ」
「今日は二名なんですが、カウンター席でお願いできますか?」
「かしこまりました。ご案内いたします」

(今日はって、こんな高級店にしょっちゅう来てるってこと? それに、名乗らなかったのに顔が通ってるなんて、さすが老舗の五代目……)

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