24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~
琥珀糖の涙

 強引に連れてきてしまったと思いつつも、今さら帰すつもりはなく、行きつけのバーへと急ぐ。

 引き留めずに別れてもよかったことは、頭で分かっている。たまたま店に顔を出していた時にやってきた、女性客だったのだから。

(あぁ、また濡れてる)

 番傘の中で伊鈴が少しでも距離を置くと肩が濡れてしまうので、立花は繋いでいる手を引く。
 そして、その小さく華奢で頼りない手にさえも、胸の奥が疼くような想いを実感していた。


 伊鈴は戸惑いを半分抱えたまま、立花の隣を行く。
 鮨店へ行く時とは訳が違う、繋がれた手の意味を、彼の横顔に探した。

 誰かに甘えたい夜ではある。
 だけど、立花の優しさと強引さに流されていいとも思えない。

 それに、今日ほど男性に対して、不信感が強い日もないだろう。

 未だにどっちつかずの心の中はバランスが悪く、シーソーの端と端を行き来しているように大きく揺れていた。

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