イヤホン越しの恋人。
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9歳年上の【ヒロ】と4年間の同棲生活を終えたのは今年の1月だった。

2人で生活していた2LDKのマンションで、荷物を置いてそのままヒロだけがそこから抜けて、それまであった音や温度がなくなった。


周りからは「素敵な人だね」なんて言われてたヒロが、急に居なくなって、聞かれはしないけれど察してる空気感に言い訳すらする気力もなくて。



ヒロに縛られた4年間を誰も知らないし
誰かに言ったところで無意味だと思う。


ただ言えることは
地獄のような日々からようやく開放されたのに
ヒロがいないこの空間が苦痛で堪(たま)らない。


寝息
テレビの音
足音
シャワーの跳ねる音
ドアの開閉音
鍵をかける音
換気扇の作動音
ライターのダイヤルが回る音
鳴り止まなかったLINEの通知音
天候が悪くなった時の着信音



浴びせられる罵声と過度な干渉から開放されたのに
それ以上に
いつの間にかヒロが居ない世界が苦痛に感じた1月下旬頃。


私は笑うことも
外に出ることも
寝ることも
できなくなっていた。
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