略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
揺さぶられる、初めての恋心
*


 美郷の早退の手続きは理子が済ませてくれたらしい。

 キスを受けた顔を上げられず、うつ向いたままごめんと謝ると、理子は気を悪くするでもなく荷物を匠海に預けて業務に戻ってしまった。

 先日言っていた、取引先の相手の機嫌を最優先で取るために気を利かせてくれたのだろうか。

 いや、合コンのためだ。間違いなく。

 けれど実際、あのままだと全く仕事にならなかったし、帰れることになったのはありがたかった。

 社会人として、色恋事に気を取られて仕事をおろそかにするなどあるまじきことだと深く反省をしつつ、美郷の頭はまだ熱でのぼせ上がったままだ。

 連れて帰ると言った匠海は、周囲の目も気にせず駐車場まで美郷の手を引いた。

 振り切れば抵抗できるほどの力だったのに、美郷は連れられるがまま車の助手席に乗り今に至る。

 美郷はまた匠海の車に乗ってしまっていることに、居たたまれない気持ちでいた。

 思い出すだけでも鼻血を噴いてしまったのに、休憩室でもあんなに何度も口唇を奪われて、美郷の頭と心臓と心は史上最高温度にまで上昇している。
< 117 / 241 >

この作品をシェア

pagetop