略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
急接近!?あるいは拗れる関係
*


 翌月曜日。

 財布を持って、理子と共にエスカレーターを降りる。

 お昼の時間にざわめく1階フロアの、大きな柱の前に異様なオーラを放ちながら佇む人を見つけた。

 ぎくりと肩が強張り、そちらへ視線を向けないように俯く。

 気づかないふりをしようとしていると、後ろから着いてくる理子が美郷の背中をツンツンとつついた。


「ひゃっ!」 


 背中のくすぐったさに、思わず声を上げてしまった。

 響いた声にちらちらと周囲の視線が集まる。


「もう理子ちゃん!」

「だって先輩、結城部長に気づいてないからー」


 振り返ると、理子は口元を財布で隠しながらも、三日月型の目がニヤニヤしていることを示していた。


「お疲れ様」


 聴こえた低い声に、ひしと固まる。

 ニヤけた理子の目線が、美郷の後ろにその人がいることを知らせた。


「お疲れ様ですっ、結城部長」


 いくら目を合わせないようにしても、匠海が美郷を見つけるのは避けられるはずがなかった。
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