メガネ君は放課後ヤンキー?!
体育館裏の田中くん
「学校内だけでなく、放課後もこの学校の生徒として自覚をもって行動をするように」
担任の長々と続く話が終わり、私はさっさと教室から出た。
幸か不幸か、その長い話のおかげで他のクラスの生徒のほとんどが部活に向かっており、二年生のフロアの人気は少ない。
階段を下りた私は、人通りの少ない南門へと向かう。グランドからは野球部の掛け声と、
校舎からはトランペットの音が響いている。
校舎を出て、プールと体育館の間の日の当たらない道を歩いていると、道端に鞄が無造作に転がっていた。
誰かがいる。
しかも、集団で。
足早に立ち去ろうと心に決めたその時、
男子生徒の声が聞こえた。
その声に聞き覚えがある気がして、
声のする方を見てしまった。
あまりにも意外な光景に、戸惑ってしまった。
聞き覚えのあったその声こそが、
まさに田中大昇のもので、
5・6人の男子と話していた。
クラスでは誰ともつるんでいる様子も
見せないのに…。
その違和感に、嫌な予感がざわざわと押し寄せる。通り過ぎるまでの間、私はその光景から目を離せずにいた。
しかしそんな予感に反して、田中君は普段クラスでは一度も見せないような、屈託のない笑顔を見せていて。
その表情がさらに意外だった。
見てはいけないものを見たような気がしたからか、焦りからか、私の心臓がドクんと脈打った。
よく通る声の男子だけの声が、はっきりと聞こえてきた。
「お前、その口がよく言うよ」
しかし、田中君の声は小さくて何を言ってるか、
はっきりとは聞き取れない。
「ははっ、お前ほんと見た目とギャップありすぎ」
そう言われた田中君は、右手を気だるそうに上げると他の男子たちを置いて、地べたに転がっていた鞄を持ち上げた。
その時になってやっと、私はさっきまで足早に立ち去ろうとしていたことを思い出した。
「あれ、中村さん。」