決して結ばれることのない、赤い糸
感じるのは、隼人の手のぬくもりだけ。


足首が浸かり、膝が浸かり、太ももが浸かる。

それでも、ただひたすら前だけを向く。


ついに腰が浸かり、胸の高さまで波が押し寄せる。


そこでわたしと隼人を向き直った。

わたしも隼人もいい顔をしていた。


なぜなら、これから2人いっしょになれるんだから。


わたしたちはまるで、引き寄せられるかのようにキスをすると――。

そのまま、波の中へと姿を消した。



…ゆっくりと目を開ける。

辺りは暗かった。


てっきり、明るい天国かと思ったけど…。

もしかしてここは、…地獄?


おそるおそる体を起こすと、暗いと思っていた頭上には、いくつもの小さな光が見えた。


あれは……星?

ということは、…空?


そして、我に返ってハッとする。
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