冷たいキスなら許さない
過去の声

真実

結局、スマホの不在着信件数とメッセージ通知の多さにげんなりして早退という選択をした。

確かに返信するしないというよりも全部に目を通すことだけでも大変だ。
今から出社しても、森家のご両親の先走った情報に踊らされたウエディングプランナーの会社の営業さんたちと顔を合わせてしまうかもしれない。
とにかく、できることから対応していかなくては。

アパートに戻ってまず、進さんに電話をした。

「かかってくると思ったよ。で、俺たちは何をしたらいいの?」

私が何も言う前に進さんはそう言った。

「まず、ご両親にストップをかけてもらえませんか?支社の仕事に支障が出ていて」

「ああ、結婚式場案内センターとか式場の営業さんがやってきた?貸衣装屋や家具屋も来た?ああ、旅行代理店とか写真屋もだよね。明日はベビーグッズの店から営業さんが来るかもね」
電話の向こうでゲラゲラと笑い出した。
まさか、と思いつつ経験者の言葉には重みがある。

「いや、笑い事じゃないですよ。そんな事されたら仕事どころじゃないですし。現に今日私は会社に出社できなくて展示場に一日いたんですから」

「でも、兄貴は?兄貴は何してんの?」

「ええと、大和社長は別の仕事の・・・私の尻拭いに動いてくれていて、今はそれどころじゃないんです。だから下北さんやこちらの事務の方とかが対応に当たってくれていて。本当に申し訳なくて」
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