冷たいキスなら許さない

悪夢のような再会

他人の空似だと思いたかった。
でも、目の前に立つ男性は紛れもなくあの人で。

驚いたのは向こうも同様だったようだ。
大きく目を見開いたあと、口を小さく開けたのが見えた。

ホンモノだ。

地割れのように響く心臓の拍動音。
数秒間呼吸が止まり、息苦しさに足の力が抜けていきしっかり立っているのか自信がなくなる。
真っ白になりそうな思考を何とか立て直すことができたのは私のプライドだ。

「フォレストハウジングの本木灯里と申します」

営業スマイルをぴったりと貼りつけて彼に視線を合わせた。土間に立つ私は彼より一段高い所にいる。
背に高い彼にいつも見下ろされていたけれど、今日はさほどの身長差はない。

「驚いた、灯里か。この業界にいたなんて知らなかった」
彼は心底驚いているようだ。

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