転生少女が落ちたのは、意地悪王子の腕の中~不器用な溺愛は何よりも甘いのです~
*愛して
chapter9 愛して


準備や段取りに追われ瞬く間に二週間は過ぎ去っていき、今日はもう問題の婚約パーティ当日であった。

開始予定時間は1時間半ほど後だ。私はといえば、侍女にきつくコルセットを締められ悲鳴をあげていた。これまでにもされたことは何度かあるけれど、今日はいつも以上にぎりぎりと締め付けられている。

「マイカ様、我慢してくださいませ!お時間が迫っております!」

侍女の訴えに私はこくこくと頷いた。

「わかってます!頑張って腹引っ込めますから!」

「腹などおっしゃらないでくださいませ。貴女はゆくゆくは王妃になるお方でごさいます。気さくなお人柄、私共は好きですけれど……今日は婚約発表!貴族の方々が沢山いらっしゃるのです、いつも以上に気を張らねばなりません」

「そうです!マイカ様はお綺麗なのですから!もっと胸を張って、コルセットも締めて!」

もう1人の若い方の侍女がぐんとコルセットの紐を引っ張る。

「いだだだ!どさくさに紛れて締めないで!」

「よし!大丈夫ですよ、もう終わりましたからねー」

……なんか、歯医者に行った時のことを思い出すなあ。ちょっと懐かしい。向こうのことを思い出したのは久しぶりだ。

でもこうしてグイードに出会っていなかったら、きっともっと頻繁に色々なことを思い出して郷愁に駆られることが多かったんだろう。

婚約パーティ直前にも関わらずそんな感想を抱いて、侍女ににっこりと微笑まれた私は涙目でへらっと笑った。

そこからはさすがの早さで、私は十数分も経たないうちに姿見の前に押し出される。

「いかがですか?侍女皆で、マイカ様に似合うものを選んだんですよ」

薄い赤色が基調でシフォンが幾重にも重ねられふわりと大きく膨らんだ、絵本のお姫様が来ているようなドレスだ。所々にパールビーズが縫い付けられ、光を反射して煌めいている。
それだけだと少し幼く見えるが、上半身はぴったりとしており胸元と背中が割と大きめに空いているためバランスが取られている。

「凄く綺麗!だけどちょっと……恥ずかしい……んだけど」

「何を言っておられますか。控えめにしたくらいです」

本当か?と疑いの目を向けたものの侍女たちはにこにこしているだけだ。

仕方がないので、そうか、そういうものなのか……と言い聞かせ自分を納得させると、丁度呼び出しに来た侍女について部屋を出た。
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