クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした
1.帰ってきた御曹司



朝7時、きっかりに起床するとまずは洗濯機を回す。
朝食は8枚切りの食パンか冷凍のごはんパックを解凍。卵や納豆みたいなタンパク質もなるべくとりたいけど、それは気持ちに余裕のあるときだけ。今日は小さなごはんパックを解凍し、白だしとフリーズドライの小葱とお湯をかけて、簡単なお茶漬けにしてしまった。
ちなみに、お弁当も気持ちに余裕のあるときだけにしている。
まあ、気持ちに余裕のある日なんて一週間のうち一日くらいなものだけど。

食事が終わると部屋を軽く片付け、洗濯物を干す。
私の部屋は5階で、ベランダは風が強いのでピンチでしっかり止めなければならない。お日様がたっぷり差し込むから、これはこの部屋の一番の美点だと思う。鉢植えくらいは置いてもいいと思いながら、何年も何も買っていない。育むのが苦手だから、枯らしてしまいそうで手が出せないでいる。

ブラウスとひざ丈スカートという大抵いつも似たり寄ったりの通勤服に着替え、ヘアセットとメイクを済ませる。ロングヘアはひとつにまとめてしまう。メイクは濃すぎず、薄すぎず、主張しない。
あまり派手な顔でもなく、私のメイク技術もたいしたことはないので、鏡の中の私は漫画のモブキャラでいそうなありふれた女性会社員だ。
鞄の中身をチェックして、3センチヒールのパンプスにつま先を入れ、八時には出勤準備完了。

阿木真純(あぎますみ) 30歳、今日も元気に出勤します。
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