覚悟はいいですか

麗奈は急いで会場へ戻って行った
私達も部屋を出ると、礼は上着を脱いで肩に掛けてくれた

服を着替えに控室まで行くと言うと、そのままで良いからと急かされる
それでも荷物を置いてあるからと控室に戻るのだけは許してもらい、着替えや自分の分の資料などをまとめて持ち、礼と共に会場のホテルを出た
そのままタクシーに乗り込むと、運転士へ聞いたことの無い住所を告げている

私の家に送るはずではなかったか、疑問に思って聞くと

「俺の家に行く」

とさらりととんでもないことを言う

「なんで?」

「言ったろ?待ち伏せされてるかも知れないし、何よりもあの家じゃ俺が安心できない。
頼むから今は言うことを聞いてくれ」

いつになく真剣な顔で懇願するように言われては断れない

「…わかった」

渋々ながら了承する

正直、私だって一人になりたくない
別に礼の家でなくても、とは思うんだけど…

やっぱり、また何かを間違ったと思うのは気のせいかしら?
場所のこともあるが、そもそも一緒にいてくれるのは礼でなくてもよかったんじゃない?

あれ…どこでそうなったの?


今更気づいてもあまり意味のないことをとりとめなく考えていると、タクシーは会社から10分とかからないところに建つ高層タワーマンションのエントランスに止まっていた

< 112 / 215 >

この作品をシェア

pagetop