覚悟はいいですか
想定外の言葉に耳を疑ったが、紫織を安心させるため、極力表情を変えないようにして続きを促した
「そう思う根拠は?」
「うん。経理に移ったばかりの時、秘書の頃から仲のいい同期の男の子と、たまたま二人で食事する機会があって」
そ、そんな奴がいたのか!?
「私を送ったその帰りに、彼の車がトラックに追突されて大怪我で入院したの。お見舞い行ったけど、二度と来ないでくれって」
「何があった?」
「それが聞いても教えてくれなくて。無理強いもできず、結局それっきり。
それから少しして私に交際を申し込んでくれた人がいて。告白してすぐ、自宅が火事で焼け出されてしまって。会社も辞めて音信不通になってしまったの」
「偶々続いたってわけじゃないのか?」
「うん…私も最初はそう思おうとしたけど。それからも飲み会とか、仕事の関係で何かの拍子で男性と二人になると、後で必ず相手に何か不幸にあったり、ケガをしたりすることが続いて起きたの。大丈夫だったのは友和さんくらいだけど、ほぼ綾乃さんも一緒にいたし。
その内、単なる顔見知りと駅まで一緒に帰ったら、その人がホームに転落して大事になって……
だから男性と二人でいないように注意したわ。会社の制約についていちいち話したくないから、なるべく地味で目立たないようにして、他人に興味を持たれることの無いよう心がけて。そしたら同時に周りにも何も起きなくなってきた
私は恋愛しちゃいけないのよ、男の人と関わると、その人が不幸に会うから」