大好きな先輩は隠れ御曹司でした
3.
「ただいまー。おっ、タイミング良かった?」

「うん、ちょうどご飯も炊けたとこ。先にお風呂入る?」

「んー。でも光希もまだなんだろ?先に夕飯にしよう」

「じゃあ並べちゃうから手伝って」

「了解」

就職と同時に一人暮らしを始めた光希の部屋に岡澤が帰ってくるのも、寛ぐのも、すっかり馴染んだ光景だ。
ネクタイとジャケットを脱いだ彼がテーブルを拭いているのを眺めるのさえ、飽きずに眺めていられる。ただ、光希だけが好きが大き過ぎて悔しいから内緒だけど。

「何、テーブル拭いててもいいオトコ?」

眺めながらぼんやりとしていたらしい。揶揄う岡澤の目が楽しそうに細くなる。

「違います。昼間の文句をどうやって言おうか考えてたの」

「文句?」

「そうだよ。あんな……おでこに、その……」

「キスしたから?恋人なのに?」

「いくら恋人だって会社で仕事中だし、それに……」
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