主任、それは ハンソク です!
プロローグ / 主任、あなたが怖いです

「おいっ、このいい塩梅にふざけたメモ用紙を俺のデスクに置いたのは誰だ!」

 朝の慌ただしい最中。事務所内に雷鳴のごとく轟くその声に、私は思わず身を縮こませる。と、ほぼ同タイミングではす向かいに座る男性社員が弾けるように立ち上がった。

「は、はいっ! ぼっ、僕ですっ!」

 彼の視線は、私の背後からずかずかと近づいてくる大きな気配にくぎ付けで、可哀相に顔面はすでに真っ青だ。

「……そうか。飯塚ぁ、お前かぁ」

 背後から迫りくる怒気を孕んだ雷神の声に、私は他人事ながらもさらに縮み上がる。お向かいの彼、飯塚さんの顔色は青を通りこして黒になりかかっていた。

「も、申し訳ありませんっ!!」

 血を吐く勢いで叫びながら、彼が頭を下げた。

「いいから、頭あげろっ」

 そう言って私の脇をすり抜ける雷神の振り上げた手の中のメモ用紙が、ちらりと視界に映り込んだその途端。

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