愛を呷って嘯いて


 それから十四年。わたしは二十七歳になった。この十四年で色々なことを身に付けたけれど、あれが誠の恋だったという証明は、まだできていない。

 何度もこの恋は諦めてしまおうと思って、他の誰かと付き合ってみたりもしたけれど。結局長続きしなかった。すぐに彼の顔が浮かんでしまうのだ。

 だったら一歩踏み出してみようとも思ったけれど、それも無理だった。わたしは彼の連絡先も住所も、何の仕事をしているのかさえ知らなくて。彼がたまに実家に帰って来ても、話しかけることすらできない。

 兄妹として仲良くしようとしても、男と女として仲良くしようとしても、もはやそれが不可能なくらい時間が経ってしまった。

 まず話さなければ、前進も後退もしないというのに。それすらできないなんて、我ながら情けない結末だと思った。

 こうなったら、年に一、二度しかない会話のチャンスをじっと待つより、両親から連絡先や住所を聞き出して突撃するだとか、無理矢理同居生活を始めるだとか、強引に動き出さなければ、何も始まらない気がした。

 でも、話しかける勇気すらないわたしが、そんなことできるはずがない、と。結局この場に留まってしまう。
 十四年前お父さんから借りたシェイクスピアの本は、すっかりくたびれていた。




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