【誠の恋をするものは、みな一目で恋をする】




 十三歳、初夏。
 買ってもらったばかりの爽やかで可愛いワンピースを着て、初めて美容院で髪を綺麗にセットしてもらい、お母さんと一緒にホテルのレストランに向かった。
 こんな場所で食事なんて初めてのことだったし、心臓が飛び出しそうなくらい緊張したけれど、少し大人になった気がして、背筋をしゃんと伸ばした。


 お母さんが再婚することになった。今日はその新しいおとうさんとおにいさんに会う日だった。
 お父さんが死んで八年。お母さんは一人でわたしを育てるため朝早くから夜遅くまで働いていて、その大変さは子どもの目から見ても明らかだったから、驚きながらも喜んだ。

 それに新しいお父さんができるなら、もっと長い時間お母さんと一緒に過ごせるかもしれない。授業参観や運動会にも来てくれるかもしれない。

 新しいおとうさんは優しくて子ども好きで物知りな人らしい。それを話すお母さんの表情は、思い出せる限り一番幸せそうだった。

「きっと亜岐もすぐ仲良くなれると思うよ」

 仲良く、なれるといいな。亡くなったお父さんとの思い出は正直あまりない。出張ばかりであまり家にいなかったし、亡くなったのも突然。出張先のホテルで、くも膜下出血だったらしい。
 家族より仕事を優先させるひとだったから、休みの日にどこかへ連れて行ってもらったことも、一緒に遊んだこともほとんどなかった。そのせいか、対面前から新しいおとうさんへの期待値は跳ねあがっていた。

 おにいさんができるというのも嬉しかった。憧れのきょうだい。憧れのおにいさん。そのひとはどんなひとだろう。格好いいひとだといいな。優しいひとだといいな。この辺りではわりと有名な高校に通っているらしいから、きっと頭の良いひとだ。
 早く会いたくて、早く仲良くなりたくて、今か今かと到着を待った。