皇帝陛下の花嫁公募
第一章 皇帝の花嫁募集
 ヴァンダーン帝国の宮殿は、帝国の威風を伝える壮麗かつ巨大なものだった。そして、内装には目も眩むような豪華な装飾が施されて、見る者を圧倒させる。すべては国の力を誇示するためのものだ。

 だが、皇帝アンドレアスの執務室にはそういった装飾品はない。もちろん皇帝が使う部屋であるからには、それなりの手の込んだ家具や調度品が置かれているが、すべて実用品だった。

 黒髪のアンドレアスは窓を背にして、重く厚みのある机につき、目の前に立つ宰相ネスケルを鋭い青い瞳で睨みつけていた。

「私にはそのような暇はないんだ!」

 執務室にはネスケルの他に、秘書長のギュンターと側仕えのハンスがいて、いずれも部屋の隅に控えている。

 この二人はアンドレアスが不機嫌なときには何も言わずにじっといているほうがいいと判っているが、ネスケルは言わねばならないと決心したときに口を閉じていたことはない。
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